エンゼルメイク(エンゼルケア)は一般に死化粧と呼ばれるものですが、故人を美しく着飾るお化粧ではなく、今生での最期の姿にふさわしい姿になるために、看取りに携わる者が手助けをするケアです。
元・看護師で人気作家の小林光恵さんが、2001年1月にエンゼルメイク研究会を設立され、2004年4月に「ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案」(小林光恵・エンゼルメイク研究会編著 日本看護協会出版会)が出版されたことをきっかけに、全国の医療機関を中心に旧態依然とした死後処置を見直す動きが急速に拡がっています。
現在は、ほとんどの方が病院等の医療機関で病死しています。特に最近は医療技術の発達もあり、闘病期間が長くなっているせいか、元気な頃とは容貌が著しく変化していることが少なくありません。またお風呂に長く入れなかったり、髪を洗えなかったり、着衣が乱れたりしていることで清潔感を失い、その方の人格が否定されかねないようなだらしのない姿で旅立ちを余儀なくされることもあります。エンゼルメイクの目的は、一生懸命人生を生き抜いてこられた方の最期の姿が、人生を台無しにしかねないような哀れな姿で人格や尊厳を損なうことにならないように行うための処置といえます。
誰のためのメイクなのか?
エンゼルメイクは前述のように亡くなられた方の人格や尊厳を守るための処置といえます。しかしながら、その行為が残されたご家族のための遺族ケアにつながる行為でないと意味はありません。これは死化粧や死後の処置に携わっている方々の多くが感じている共通認識です。
エンゼルメイクは故人を見送るご家族や近親者が「最期にふさわしい姿だ」と思えるかどうかがすべてであり、少なからず救われた気持ちになることが最も重要であると考えます。
ですから、どんなに上手く処置や化粧ができたとしても、あらゆる第三者がきれいと感じても、深い悲しみを持つご家族や近親者が納得し癒されなければ意味はありません。
エンゼルメイクに携わる上で最も大切なことは、素晴らしい技術や道具があったとしても、メイクや処置に携わる方の個人的な美的感覚や価値観のみで行わないということです。
エンゼルメイクとは、単に死後処置や死化粧を行う行為をさすのではなく、ご家族の「こうしてほしい」という心の叫びのような声に耳を傾ける、あるいはそれを導くために聞き取りをする、あるいはケアのための声かけや所作を含めて遺族の心に寄り沿うための看取りの技術全般であると考えております。
故人の傍で悲しんでいる方が何を望んでいるのかを感じることが、エンゼルメイクを行う第一歩なのです。